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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2011/02/25

大食い予選に見る大食いの資質(4)…「授乳大食い」

これまでは、『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)に登場する三つのカテゴリー(本選・予選・新人戦)におけるそれぞれの特色やレベル差について説明してきました。そして、最も”素人に近い”とも言うべきフレッシュなレベルにある「新人戦」というカテゴリーにおいて、直近に出産歴のある女性が格段に勝利に近い傾向にあるという点、そして、その背景として考えられる医学的理由についても考察しました。

今週はさらに論をもう一歩進め、直近の出産とも縁のある「授乳」ついて考えてみたいと思います。というのは、この新人戦というカテゴリーにおいて、「授乳大食い」とも呼ぶべき現象がこれまた顕著にみられるからであります。

今でもスタッフの間で語り草になっているエピソードがあります。それは、それまで本選しか見たことの無かった私が初めて経験した地方予選でもある、2007年夏の岡山予選での出来事でした。

倉敷市内で行われた岡山予選の食材は、1回戦が『桃太郎地鳥の串焼き』(串えもん丸の内本店)、2回戦が『ぶっかけうどん』(ぶっかけ亭本舗ふるいち)でした。初めて見る新人戦でしたが、参加選手のパーフォーマンスがそれまで見ていたプロ級の大食い選手のそれとは量的にも質的にも異なることはすぐにわかりました。そこで特に目についたのが、乳飲み子を連れて参加する選手の多さでした。駆け回る幼児、泣き叫ぶ乳児、そして、なすすべも無くボーゼンと立っている若きダンナたち…。それはまさしく、「素人レベル」かつ「女性限定」の大食いとは何かということを一目で明らかなほどに語りつくした光景でありました。女性の妊娠・出産は、食欲の亢進や食習慣の変化、食嗜好や欲求の変化、家事の増加と比例するストレスの増大、体型の変化にダイエット圧力など、女性のカラダに短期間のうちに劇的な変化をもたらし、そのアウトカムとして「大食い」が残るのだという事になりましょうか。(大食い予選に見る大食いの資質(3)…男でも「妊娠線」?!

しかし、岡山ではそれだけに終わりませんでした。1回戦で上位3名に入ったものが2回戦に進出し、地区王者を決定するのですが、この勝ち進んだ選手が軒並み「授乳中」だったのです。そして、1回戦の試合直後にトイレに駆け込んだかと思うと、便器のあるトイレの個室には見向きもせず、洗面台の前に並んで一斉に搾乳を始めたのです。

「試合途中からお乳が張って張って…もう痛くて大変でした~!」
「食材が下に行かずに、ムネに行くんですかね~?(一同爆笑)」

食材が大腸に進まずに乳腺に?そこで私は気がつくのです。妊娠中に食べたものは、子宮の中の胎児にとられる栄養分以外は腸を経由して排出するか、自分の体で代謝ないし蓄積されていたはずです。しかし、授乳をするようになれば、新たな「カロリーの排出経路」(?!)が発生します。食べたカロリーが乳腺から出て行くというものです。産後の赤ちゃんが必要とするカロリーは、妊娠中の子宮内の小さな胎児が消費するカロリーとは比べ物にならないことは明らかです。そして、赤ちゃんが離乳食導入などの段取りを経て離乳するまで、この状態が続くのです。以上から、次のような理論が導き出されます:

「産後の授乳期とは、オンナの人生のどの時期と比べても、”食べても太らない”時期に相当する。このことが、大食いを可能にし、かつ加速させる」

ここで、「オンナ」という言葉を使ったのには、一応意味があります。子供の頃、特に身体が急激に縦成長する時期は、食べたカロリーが骨格の成長に消費され、体に肉がつきにくい時期でもあります(最近ではそれでも小児肥満が増えているようですが)。体のサイズも必要カロリーも日常の運動量も異なる小児期の話が入ってくるとややこしいのと、当番組が男女とも18歳未満の者の参加を禁じていることもあり、ここではあえて大人の女性という意味もこめて「オンナ」としてみました。

倉敷では、2回戦のぶっかけうどん45分勝負の直後も、トイレでの異様な光景が繰り返されたのは言うまでもありません。そしてさらに驚いたのは、移動して翌日撮影のあった熊本予選(水前寺公園)においても、再び「上位進出者がトイレで搾乳」という現象が繰り返されたことです。

妊娠・出産・授乳というオンナの人生における激動期に、大食いの資質が開花する人がいて、そこから地方予選レベルの大食いクイーンが排出されていく。そして、授乳が終われば、まるで乳の張りがしぼんでいくように、大食い番組の選手となる必然性も必要性も意欲も失われていき、平穏な日々へと戻っていく…。それが大食い地方予選の真実であり、本来あるべき姿なのかもしれないと、私は最近つくづく思っています。その辺を考えるきっかけとなった話を、来週改めて紹介したいと思います。

 

(2007年5月27日、熊本・水前寺成趣園にて、司会の山崎まさやさんと。高校野球オタクの私にとって、横浜高校ご出身の山崎さんの語る「横高」のお話は大変参考になりました)

 

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