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Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2011/02/18

大食い予選に見る大食いの資質(3)…男でも「妊娠線」?!

  大食い予選に見る大食いの資質(3)…男でも「妊娠線」?!

先週は、「後天的に大食いの能力を獲得するためのキーワード」としての「太っていた既往」と「ダイエット」について取り上げました。人生のある時期に非常に太っていたという経験を持つ人が、ある時を境に一念発起して大掛かりなダイエットに成功するというストーリーは、胃袋のサイズをグッと広げることに貢献するようです(大食い予選に見る大食いの資質(2)…「太っていた既往」と「ダイエット」)。元々食いしん坊だった胃袋が、腹腔内脂肪や腹部の皮下脂肪が消えることによって、一気にそれまでの何らかの制約から解放されるようといった機序が、その話の裏から見え隠れします。

そして、それは男女を問わないということも、私は最近の『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)の男性有望新人を発掘する『男予選』の中で経験しました。妊娠線のような皮膚線条があったり、やせてはいるけれども皮膚のたるみの強い男性が、参加選手の中に必ず一定数参加してきていたのです。そして、もっと驚いたのが、予選において上位陣に食い込むのが、決まってそのような男性であることが多いということでした。彼らは決まって試合後に「元・肥満」の経歴を告白する…そんなことが数度あり、「人が大食いになる機序」について深く考える契機となりました。

とはいっても、「妊娠線」「皮膚線条」とくれば、本来は女性のものです(当たり前ですが)。「妊娠線のある男性」(変な表現ですが…)が大食いに強いのであれば、本物の妊娠線を持つ女性だって強くてしかるべきです。

ここまでくれば、当番組のファンで継続的に番組を見てくださっている方々は、すでに私の言いたい結論が完全に見えてしまったことと思います。「本選」「予選」「新人戦」という三つのカテゴリーのうち、特に地方で開催される「新人戦」という最も初心者・素人の参加が多いレベルにおいて、参加者は出産歴のある女性が多く、それも撮影時点で授乳中というような出産したてのホヤホヤの選手が上位に入るのは、もうすっかりお馴染みの光景となりました。これは、当番組の他の2つの上位カテゴリーと比べても明らかに目を引く法則であり、地方予選のロケ現場にはいつも赤ちゃんが溢れている(?!)ような印象すらあります。このことからも、当番組のような大食い番組ないし大食い文化の有無に関わらず、一般社会における「(自称・他称をとわず)他人よりも多く食べる」という事象は、妊娠・出産との強い相関があると考えることに不自然はないでしょう。

ここで、簡単に「妊娠線」について勉強しましょう。南山堂医学大辞典によると、「妊娠線」には2種類あり、妊娠末期に腹壁または乳房の皮膚に生じる青赤色の紡錘状・不定形の線が「新妊娠線 new striae」、分娩後に瘢痕化し銀白色の線となったものが「旧妊娠線 old striae」とあります。私が大食いロケでよく見るのは、この「旧妊娠線」の方です。そして、その成因についてはこう記載されています。

「子宮や乳腺が急速に増大し、その部の皮膚が過剰に伸展されて皮下結合組織が断裂」
「妊婦でなくても急激に肥満した場合は妊娠線と同様の所見が出現することがある」

基本的に妊娠線は、一度生じたら(目立たなくなることはあっても)完全消失することはありません。つまり、皮膚が一度引き伸ばされたことがあるという既往は、お腹の皮膚に永遠にその痕跡を刻むのです。「太っていた既往」のある人の中には「妊娠線」のない人も相当数いて不思議はありませんが、その逆はまず無いと考えるべきでしょう。

そして、妊娠・出産を経験した女性は多かれ少なかれ皆、妊娠による体重増加や体型変化という現実に直面します。これを元にもどそうとする本人の意思(ないし家族や社会からの圧力?)ゆえのダイエットに邁進する人もいれば、亢進する食欲そのままに食べ続けて永遠に元に戻らない人もいることでしょう。昔は後者の方が多く、だからこそ「お母さん=ふくよか」という固定観念があったように思いますが、今は社会がそれを許してくれないのか、すっかり様変わりした時代に突入したようです。最近、日本に来てテレビをつけるたびに驚くのが、産後の減量に成功した体験を紹介するダイエットサプリの通販番組や、「劇太りから一気にスリムになり彼氏をゲットした」というようなシナリオのダイエット礼賛番組ばかりが、各局で毎日のように溢れていることです。この傾向が続けば、当番組の地方予選の参加者数はそのうち膨れ上がり、レベルもズンズン向上していく時代が来るのでしょうか。

なお、産後のダイエットに成功したママたちの大食い能力の開花は、肥満後のダイエットが胃拡張に貢献するという理論である程度は説明可能かと思います。しかし、どうもそれだけではないようです。その辺については、来週に稿を改めたいと思います。

 

(2010年5月30日、新人女性発掘戦である札幌予選にて。中央が司会のアンジャッシュ渡部さん。後方に小さい子の手をひいた選手の親類の姿あり、ギャラリーの一員として応援に励んだりする)

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