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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2010/10/08

大食いベースボール(2)…オレンジ色の成功体験

2010年9月26日オンエアの『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)は、例年の女性上位の大会と比べて「男臭かった」ということを前回述べました。その一因として、今回のロケには野球人が多く関与していた点が考えられます。その中でも、今回のロケが当番組初参加であり、健闘したものの惜しくも二回戦で敗退した堀場智博さんは、つい二年前まで高校球児であったというプロフィールもあり、番組に新鮮な風を巻き起こしてくれました。

その堀場さん、番組初登場は本年8月初旬に行われた男性対象の名古屋予選でした。名古屋港にてあんかけスパゲティを3.5キロも平らげて1位となった有望新人の彼でしたが、実は試合前の健康診断で口内炎が見つかっており、結構痛そうでした。熱く塩分の多い食材によるさらなる悪化も懸念され、私の方から下の写真に写るオレンジ色のトローチを試合前に渡しました。これは、アメリカで購入した局所麻酔成分&消毒成分入り口腔用トローチ「Cepacol」といい、以前のコラムで掲載した緑色のトローチことドイツの市販薬「ドロ・ドベンダン」(現名称はDobendan Strepsils Dolo)と、有効成分が「ベンゾカイン」「塩化セチルピリジニウム」である点も同一なら、含有量も全く同じで、異なるのは発売国と色だけであります。(→大食いロケ必携医薬品(2)…「ドベンダン下さい!」の巻
 
 

試合前にこのオレンジ色のトローチで口内炎を処置していたことがどの程度奏功したのかは分かりませんが、彼はこの試合で勝利することができました。試合後には、「トローチがすごく効いて、痛みを感じずに試合できた」とまで言ってくれました。そして、8月26日の「男予選」決勝にコマを進めたのですが、会場に着くなりスタッフからこのような伝言が届いてきました。

 「センセー、名古屋のギャル男くんのところにすぐ行って下さい。何か、トローチが欲しいんだそうです」

即座に堀場君のことだと思いました。まさか、あのあと口内炎が悪化したのだろうか…家で特訓し過ぎたとか…?色々と不安が頭をよぎりました。しかし、約三週間ぶりに会う堀場君は元気そうで、口内炎もすっかり良くなっているようでした。

堀 「先生!あのトローチすごく効いたんです!」
片 「だったら、トローチ要るのか?」
堀 「僕、今日の試合で勝負に行きたいんで、あのトローチまた下さい!」

ところが、この男予選決勝の時点では困ったことに、私の手持ちの口内炎トローチのうち、アメリカで購入したオレンジ色のものはあまり残っていませんでした。代わりに、ドイツから持参した緑色のものはたくさん準備してありました。このため、有効成分も含有量も全く一緒なのだからと考え、ドイツから来た緑色のトローチの方を渡しました。しかし、これをなめるなり、彼がこう言うのです。

堀 「コレ、あんまり効かない気がする…」
片 「えっ?だってコレ、あのオレンジのやつと全く同じ有効成分だし、成分量も全く一緒。違うのは色素だけなんですけど…」
堀 「でも、こないだの名古屋予選のときにオレンジで優勝しているから、できればやっぱりオレンジのヤツで試合に臨みたいんです!」

この話をきいて、やはり堀場君は野球人なのだと気づかされました。というのも、先週のコラムで紹介した京王電鉄関係者の「元・野球人」の方が、この堀場君のエピソードをこう説明してくれたのです。

「その気持ち、すんごく良く分かります!野球の人間は、(試合などで)一度何かがすごく上手くいった場合、なるべくその『型』を変えたくないと思うものなんです。ソックスをどっちの足から履くとか、野球に何の関係も無いと分かっていることでも、自分からその『型』を崩すのは怖いんです。だからどうしても、縁起をかつぐような行動が多くなる」

よほどの親近感をおぼえたのか、この元・野球人は試合後の堀場君に熱い握手を求めに行っていました。緑のトローチよりもオレンジのトローチという選択は、医学的には何ら意味をなさないものでありますが、野球人の行動原則に照らし合わせると極めて理に適っていたようです。

野球人のゲン担ぎというものを大食いの現場で見ることになろうとは、事前には全く想像していませんでしたし、そのような野球人タイプの大食い選手は今まであまりいなかったかもしれません。そのあたりが、これまで女性を中心に撮影が進んできた『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)と、今回の「男臭さ」満開となった大会との大きな相違点の一つでもあったように思います。番組を通して妙に「スポ魂」感があふれていたように見えました。ちなみに、このオレンジのトローチをもってしても「男決勝」で敗退してしまった堀場君でしたが、その健闘ぶりが認められて番組特別推薦枠での本選出場を果たしました。これもまた、堀場君にとっては「オレンジ色の成功体験」だったのでしょうか。本選ロケに入ってからもまた、試合前に毎回のように彼は私のところにやってきていたのが、懐かしい残像として今も心に残っています。

「センセー、オレンジのヤツ、お願いします。僕、勝負に行きます!」


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