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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2010/08/27

大食い血液型学(6)…血液型の意味するところ

2010年秋の本選こと『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)は、いよいよ8月26日にロケ入りとなります。今大会は一年ぶりの男女混合戦であり、「ニューヒロイン」ばかりでなく「ニューヒーロー」の出現も番組としては大いに期待したいところです。また、先週は本選出場選手の血液型に占めるO型の比率の上昇と、予選レベルでの血液型比率とのギャップについて説明しましたが、今回の本選でその傾向は追認できるのか否かという点も、興味が持たれるところです。

広辞苑によると、「血液型」の項には「赤血球膜に含まれる抗原の種類によって区別される血液の型」と書かれています。ただ、これは「狭義の血液型」を説明したものであり、実際はこの赤血球膜抗原で分ける型以外に、赤血球酵素型や白血球型、血清型の分類もあります。赤血球膜で分ける赤血球型には、献血車は言うに及ばず性格判断本など巷で最も頻繁に登場する「ABO式血液型」を筆頭に、「Rh型」「MN型」「P型」などがあり、白血球型では移植医療でよく話題に上る「HLA」、血清型でも親子鑑定などに使われる「ハプトグロビン」変異型などがあります。これら、合計すると数百種にも及ぶとされる多種多様の「血液型」は、医療においては主に輸血の現場で最重要の情報でありますが、それ以外に親子鑑別や卵性診断にも用いられます。また、犯罪捜査における個人識別のための血液鑑定など、法医学的現場でも大活躍していることは、刑事ドラマなどを見ても分かる通りです。

従って、山ほどある血液型のうち「ABO式血液型」のみをクローズアップするのは、本来は適当でないと考えられます。しかし、世界の中でも日本は、自分の血液型を知っている人の比率が高く、しかも自身の血液型を語ることに抵抗が少ないという、「ABO式血液型天国」とも言える国であること、医療機関の入院時検査や輸血時ルーチン検査に含まれる血液型項目は「ABO式」「Rh式」の二つのみであること、日本人の場合、A:O:B:AB=4:3:2:1と「ABO式」ではデータが程よくばらついているのに対し、「Rh型」の場合は99%以上が「Rh+」という大いなる偏りがあることなどが特徴です。となると、アプローチしやすいABO式のデータを収集しようということになるのです。

ただ、この「ABO式血液型」には、別の重要な側面もあります。それは、「人種区分の基準となりうる」ということです。既に以前のコラムに掲載した通り、ABO血液型の「A:O:B:AB」の比率は、国によって大きく異なることが知られています。日本や韓国はこれらの四つの型が程よくばらついていますが、世界各国では必ずしもそうではありません。百科事典マイペディアには、以下の記載があります。

「A型の多い人種の集団としてオーストラリア南部および西部の先住民があり、B型はアジア内陸部ことに北部インドやモンゴルに多く、西に向かって減少する。O型は中南米のアメリカ・インディアンに多い」

以前にも引用したサイトに登場するA・B・O遺伝子別の分布状況を示す三枚の世界地図(http://anthro.palomar.edu/vary/vary_3.htm)を眺めると、上記のマイペディアの記述は明快に納得できます。そして、日本のある「極東」というロケーションが、Oの最多ゾーンである「中南米」、Aの最多ゾーンである「オセアニア・カナダ・アラスカ」、Bの最多ゾーンである「中央アジア・モンゴル・韓国」のちょうど中間に位置することにも気づきます。前2者は海を渡って、後者は主に陸路から最後だけ水路使用(あるいは、かつて陸続きだった太古の昔に渡ってきた可能性も?)で日本に辿り着いたのでしょうか。そして、これら三方から伝来した各遺伝子は、四方を海に囲まれた「黄金の島・ジパング」にて気の遠くなるような長い年月をかけて、徹底した遺伝子シャッフル(通婚)が進んだ結果、4:3:2:1という「黄金率」に到達して今に至っているのではないか…そんな推測が成り立ちそうです。

そう考えると、日本人にとっての「血液型」とは、自分の遺伝学的ルーツを暗示する記号なのかもしれません。その場合、大食いのトップ選手に特定の血液型のみが集中するという近年特有の現象も、「大食い行為」を可能にする遺伝学的素因の存在を示唆している可能性が出てきます。ひいては、「血液型別占い」や「血液型別ダイエット」などというように、日本人が世界のどこよりも「血液型」に高い関心を示すその裏に、まだキリストもシーザーもプラトンもツタンカーメンも生まれていなかった遥かなる太古の昔に逞しく生きたであろう「直系のご先祖様」へと馳せる壮大なロマンが隠されているのかもしれません。
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