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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2010/07/23

大食い血液型学(2)…サッカーはO型が有利?

2010年FIFAワールドカップ南アフリカ大会は、スペインの優勝で幕を閉じました。私の住むドイツは、そのスペインに負けた時は多少落ち込んだものの、次のウルグアイ戦で勝利して2大会連続の3位となり、最後の最後にお祭り騒ぎで締めることが出来ました。一方、我らが日本はというと、ドイツZDFの解説を担当したオリバー・カーン氏に「決勝ラウンドに進出した16チーム中、最も意外だったのは日本」と名指しされておりましたが、周囲の予想を大きく上回る快進撃を見せてくれました。また、ドイツのメディアからのインタビューに流暢なドイツ語で答える長谷部誠選手(ブンデスリーガ1部・VfL Wolfsburg所属)の姿も中継されており、その姿にはドイツ人一同も大変感心しておりました。この大会での活躍を機に海外移籍が決まった選手もいるようで、日本のサッカーのさらなるレベルアップと人気上昇が期待されます。

さて、今週あえてW杯サッカーの話を持ち出したのは、来週から紹介する大食いと血液型の関係を論じる際の大前提を説明するのに、サッカー日本代表を例に挙げた方が説明しやすいためです。まずは、日本における血液型人口の比率がA:O:B:AB≒4:3:2:1であることを念頭において、以下の数字をご覧下さい。

<W杯サッカー日本代表選手 全23名>
A    3名 (13%)
O 12名 (52%)
B  3名 (13%)
AB 5名 (22%)

この数字を見て何を考えるか…これが、大食いデータを考察する際にも重要なカギを握ります。まず、この数字を見て驚くのは、W杯サッカー日本代表選手の半数以上がO型であるということです。また、血液型人口比を考えれば、A型がこんなに少ないのも驚きです。さらに、血液型人口比の倍以上の比率を示すAB型の人数の多さも、とても意外な感じがします。

問題は、これをみて「サッカーはO型が有利?」「A型はサッカーに不向き?」「AB型の方がB型よりもサッカーで大成しやすい?」などと考えるのは論理学的にも統計学的にも誤りということであります。確かにO型とAB型が比較的多くA型が極端に少ないことは事実ですが、統計学を勉強している人なら、真っ先に指摘するのが「サンプル数の少なさ」でしょうか。あまりサンプル数が小さいと、「データのバラつきの範囲内」ということになってしまいます。これを専門的には「有意差が出ない」と言います。簡単に言えば、「単なる偶然でしょ?」で片付けられるということです。有意差を出すにはサンプル数を大きくすることが必要です。サンプル数はNと呼ばれ、医学論文を書く際も「Nが少なすぎて、何も言えやしない」「Nを増やしてこい」などと教授から言われ、ガックリした経験を持つ医師は数知れないことでしょう。

しかし、世間一般の人間と違い、ワールドカップの日本代表という、究極に選ばれた人々は、どう頑張っても4年間に23名しかいません。つまり、このテーマに関する限り、Nは増やしようがないことになります。そして、調査対象を例えば「Jリーグ全選手」「高校・大学の全国大会出場選手」ひいては「日本の全サッカー人口」といった具合に広げれば広げるほど、「データのバラつき」が減り、本来の血液型人口比に近づいていくと考えられます。しかし、それでは「トップレベルのサッカー選手」を論じることからどんどん離れていくことでしょう。

この点が、大食いを語る場合と極めて似ているのです。45分間で肉を5キロ以上胃に収めることができる人が、日本全国で果たして何人いるのでしょうか。そんな人を調査対象にしようとすれば、Nを大きくすること自体が至難の業です。かといって、Nを確保するために「肉5キロ」というハードルを3キロ→1キロといった具合にどんどん下げていくとしたら、そのデータは「トップレベルの大食い」を考える上での意味をどんどん失っていくのです。

それならば国際比較を、と考えることも可能ではあります。しかし、「血液型」に関しては、その人口比率が国によって大きく異なることが知られています。そもそも、日本ほど血液型に関心の高い国は世界的にも珍しく、それは、どの血液型もそれなりの人数がいるからこそ可能なのです。ちなみに、私の住むドイツではA:O:B:ABは43:41:11:5となっていますが、かつての移民政策の影響でトルコ系を筆頭にギリシャ系やイラン系などが一定比率含まれていることに留意する必要があります。こちらのページ(http://anthro.palomar.edu/vary/vary_3.htm)を見ると、中央アジアに近くなるほどBの遺伝子(B型とAB型)が増えるという傾向がうかがえます。そもそも、周囲のドイツ人に血液型を聞きまわると、血液型に関心を持つ者は皆無に近く、調べたことがないと言う人も多く、日本との温度差を感じます。

この「血液型」に対する温度差、W杯の出場選手一覧のサイトやWikipediaなどを見ても一目瞭然です。日本代表23選手以外の他国代表選手のプロフィール欄には、誰一人として血液型の記載がありません。興味深いのは、A:O:B:AB=32:28:30:10と比較的均等分布を見せる韓国でも、代表選手の血液型が記載されていないことです。また、隣国の中国に至っては、北京でA:O:B:AB=27:29:32:13、広東で23:46:25:6と、国内での地域差がかなりありそうで、広い国土や55もの少数民族を抱える国家としては、血液型を持ち出すのは得策ではないと考えているのかもしれません。どうやら、血液型占いや血液型別性格判断などという考え方が流行したり、血液型本がベストセラーになるというのは、世界中でも日本だけの現象であるようです。

以上を踏まえて、来週からは大食い選手に関するデータを見ていきます。



<参考サイト>
2010 FIFAワールドカップ 日本選手一覧 - Yahoo!スポーツ X sportsnavi

Racial and Ethnic Distribution of ABO Blood Types - BloodBook.com

Modern Human Variation : Distribution of Blood Types

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