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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2010/07/16

大食い血液型学(1)…蚊に刺されやすいのはO型?

2010年秋の男女混合戦こと『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)は、今年も再始動まであと一ヶ月を切りました。今年もまた、全国の大食いさんたちが集う東西予選が、七月末および八月初めに開催される予定です。我こそはという自信のある方から、大食いの現場を単に見てみたいだけという方、果ては金欠気味なのでタダでご飯にありつきたいという方まで(?)、よろしければ是非エントリーしてみて下さい。

さて、今週からは、以前の連載でも取りあげたことのある「血液型」について、別の角度から考えてみたいと思います。以前の連載(大食いロケ必携医薬品(5)…虫除けクリーム「きっかけは山本卓弥!」大食いロケ必携医薬品(6)…虫除けクリーム「きっかけは高橋実桜!」)では、当番組きっての「虫刺されキング」及び「虫刺されクイーン」として紹介した山本卓弥さんと高橋実桜さんの2人が、そろってO型であったことを述べました。しかし、「O型の人間は蚊に刺されやすい」というのは、果たして本当なのでしょうか?当番組にはO型の参加選手が多いだけに、これが事実かどうかは大いに気になるところです。

ということでネット検索してみたら、真っ先に出てきたのが次のページでした。

F.E.R.C Research Data - 2001/09/02 「蚊に刺されやすい血液型はあるのか?」

このページを見て、懐かしい思いをされた方もおられるかもしれません。”F.E.R.C”とは”ファーイーストリサーチ社(Far East Research Co.)”の略であり、1996年から7年半にわたり日本テレビの日曜20時枠で放送された『特命リサーチ200X』という番組に登場した、架空のシンクタンクの名前です。毎週、何らかの日常的な疑問をピックアップして科学的に解明ないし検証するというスタイルは、NHKの大河ドラマという最強の裏番組にもひるまぬ人気を誇り、その後の「科学バラエティ番組」の隆盛(そして捏造で失速→衰退という結末も含めて)への先鞭をつけた番組となりました。

また、この番組のさらなる進歩的な点として、「19:56~」(1996年10月~2002年1月)あるいは「19:58~」(2002年2月~2004年3月)というように、20時よりも数分早く番組が始まっていたことが挙げられます。20時ジャストに始まる裏番組に対抗するテクニックであったこの手法は、今でこそ「フライングスタート」と呼ばれ、どこの放送局でも多くの番組が採用するところとなりましたが、当時はまだ少数派であり、この点からも強く印象に残っています。

話は戻り、このF.E.R.Cのリポートには次のような記載があります;

「蚊にとっては、花の蜜とO型の血液は非常に近いと感じているという。…(中略)…蚊は汗に含まれる血液型物質の匂いを毛状感覚子で感じ取り、花の糖分に似たO型の血液を見分ける。」

この番組からさらに三年後となる2004年、O型が蚊に刺されやすいとする論文を医学雑誌に発表した日本人グループがありました。
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15311477)
この論文によると、蚊への刺されやすさはO>B>AB>Aだったそうです。ただ、この論文は調査した人数が64人という小規模なスタディであったこともあり、「単なる偶然」の域を超える差がある(統計的有意差が認められる)と結論できたのはO型とA型との間だけでした。ちなみに、この論文の著者である害虫防除技術研究所の白井良和氏は、先述のF.E.R.Cのサイトにある「O型は蜜の味」という説をキッパリ否定したと、インターネット情報サイトであるZAKZAKに述べられています。その理由について白井氏は、蚊が血液型そのもの(あるいは血液型由来物質)に反応しているのではなく、O型の人に割合が多いとされる「活発」「汗かき」「色黒」「体温が高い」という体質そのものに反応しているのではないかと考察しています。確かに、メスの蚊が産卵するには、タンパク源たる「血」にありつく必要があり、そのためにも体温や炭酸ガス、汗等のにおい等から、(植物でも昆虫でもなく)「血」の通った動物を確実に識別しなければなりません。もっとも、O型だからといっても色黒とは限らないことが高橋実桜さん(新潟美人!)を見れば明らかなように、O型でも蚊に刺されにくい人もいれば、A型でも蚊に咬まれやすい人がいて当然です。白井氏の考察は、常識的にも論理的にも至極妥当なものと考えてよいでしょう。

こうなったら白井氏には、ぜひこの研究ををさらに千人規模に拡大して発表していただきたいものです。ただ、血液型と体質の相関自体がそもそもバラつきが大きく例外の豊庫という性質を持つことから、逆に人数をあまり増やすと、かえって有意差が出ないかもしれません。有意差の出ない研究は論文になりにくく、論文にならない研究には予算がつかないという現実もあります。また、国によって血液型別人口の比率が全く異なるため、「血液型別の体質差」は全世界的に注目度の高いテーマとは言えないのです。これまでの医学界において、血液型研究があまり進んでこなかったのは、そのような事情も絡んでのことかもしれません。そしてこれは、医学界において「大食い」がなかなか研究対象にならない理由とも全く共通している話でもあります。その点からも、「大食い」と「血液型」の組み合わせ、決してミスマッチではないようです。それでは来週から、色々なデータを見ていきましょう。


<参考資料>
Wikipedia - 特命リサーチ200X

Wikipedia - フライングスタート(放送)

ZAKZAK - 伝説の実験「O型は刺されやすい」はホント“蚊”?

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