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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2007/11/16

2007年9月30日放送「元祖大食い王決定戦in Bali」を振り返る(2)

舌戦上手?!ジャイアント白田-

南半球のリゾート地、31度という気温、ほとんど真上から暴力的な強さで射す太陽光…。バリ島での大食い決勝戦が、それまでの大食いの歴史上で有数の過酷さともいえるコンディションの中で行われると聞かされた時のこと。参加選手3名(白田信幸、山本卓弥、泉拓人)は揃って不安そうな表情を隠しもせず、弱気な発言を連発するのでした。

「ドクター権限で試合中止!そして全員優勝」
「こんな条件でやって病人が出たら番組がどうなるか…」

冗談とも本気ともつかない発言を彼らがぶつけてきます。
このケース、もし私が大食い番組初登板医師だったとしたら、彼らのブラフ(bluff: ハッタリ・こけおどし)的発言に判断を狂わされていたかもしれません。しかし、そうやって彼らは互いを牽制しつつ、医師に対して少しジャレてみせているだけで、実際はもう戦う気が満々なのです。試合前の舌戦自体は別に珍しいことではありません。この場合、医師としての最優先事項は、熱中症の防止ということになります。バリという特殊環境を考えれば、食べ過ぎて気持ち悪くなるのは想定できても、それに熱中症が加われば想定不能の事故が起こりうるからです。

舌戦といえば、今大会の決勝前のワンシーンも思い出されます。
決勝戦前夜のインタビュー収録の時に、準決勝まで全試合を1位通過していた山本君のことを評して、「あいつはスゲェ、俺、負けるかも」と白田君がディレクターに言ったようです。ディレクターは決勝当日の朝、やや興奮気味にその話を周囲スタッフにしていました。しかし私は、これはブラフ作戦だな、と思っていました。ちょうど準決勝の頃に風邪が全治し、白田君の体調はバリに来てから右肩上がりでした。その体調に比例するように、胃袋の容量の調整も右肩上がりにうまくいったようです。これを一番敏感に見抜いていたのが山本君で、「白田君に負けるかもしれない」という不安感を準決勝直後にポロッと漏らしていたのが印象的でした。

この「舌戦上手」というのは、白田君の強さの秘訣の1つであったように思います。他の大食い選手に比べても、白田君は言葉での戦術が格段に巧みでした。年齢を重ね、人生経験を積む。結果、表情も情緒も安定する。実はそんなことも大食いという戦いにおいては大変重要な意味を持っている…。彼はそれを私たちに教えてくれたのです。