元祖!食いだおれ選手権(4)…マカオのカレー
マカオ料理といえば、皆様は何が思い浮かぶでしょうか。マカオは旧・ポルトガル領であり、同国のアジア貿易の拠点として長く繁栄してきた歴史があり、世界中から合流してきた食文化の影響を受けたであろうことは、想像に難くありません。ただ、中華料理やイタリア料理などに比べると、日本では馴染みが薄いと言わざるを得ません。私自身、前回の大食いロケでマカオに行くまで、マカオ料理をというものを食べたことがありませんでした。
マカオ滞在ですぐに気付いたのは、食べものがどれも日本人の口に非常に良く合う味だったことです。以前大食いロケで訪れたハワイ・バリ・タイ・シドニーにおいては、美味しいものも多かった反面、必ずしも日本人の舌に合うとは言えない料理に遭遇することが多々ありました。それが、マカオに関しては、前回コラムに出てきた「ラムチョップ・ミントソース添え」のような競技用食材からカメラの回っていない時のスタッフ用の食事に至るまで、実にハズレの無い「食いだおれ行脚」だったのでした。
その中から、今週ご紹介する一品は、コレです↓。
先週書いた「ラムチョップのミントソース添え」を用いた準々決勝の収録後、スタッフは選手を先にホテルに返し、昼食をとることになりました。入ったのは、このロケ現場のすぐ近くの裏通りにある隠れ家的な大衆食堂です。
ちなみに、マカオ名物の一つに「蟹カレー」があります。「シーフードカレー」も有名だそうです。確か、制作会社ゼロクリエイトのディレクターたちも、初めはこの手の名物カレーを注文しようとしていました。しかし、我々が入店した時刻、実は店はまだ準備中でした。大将(シェフ?おやじ?)が寝起きのような格好で出てきて、愛想のない声でこう言いました。
「コノ時間帯ダト、コレシカ出セナイ!」(←広東語)
そうして、問答無用で出てきたのが、このビーフカレーです。ぱっと見た感じは、日本のボンカレーやバーモンドカレーと変わりません。しかし、よく見れば、ルーがサラッとしていて二色のパプリカがたくさん入っているところが我らには目新しく、それでいて日本のカレーのようにジャガイモがゴロゴロと入っています。ジャガイモがゴロゴロ入ったカレーは、日本国外では少なくとも私は一度も見たことがありません。周りのスタッフも意表を突かれた表情です。早速各自が口に運んでみたところ、テーブルのあちこちから一斉に声が上がりました。
「コレ、余り辛くないね!日本の甘口カレーみたいな感じ」
「マカオと日本って、ひょっとして同じ食文化圏?」
そもそもカレーはインド発祥の料理です。それが、スリランカやバングラデッシュに中国といった近隣諸国、マレーシアやタイにインドネシアなどの東南アジア諸国、イランなどの中東諸国、さらに植民地時代の宗主国イギリスへと伝播し、さらに行く先々でそれぞれの国独自のカレーへと姿を変えていきました。
他方で、マカオと日本の間には、16世紀以来400年以上の長きに渡る交流の歴史があります。程度の差こそあれ、ともにポルトガルの影響を受けたという共通項もあります。ポルトガル語を語源とする日本語の単語には、「パン」「カステラ」「金平糖」「天ぷら」など、食べ物に関するものがかなりあり、日本の食文化がポルトガルから受けた影響の大きさを思わせます。
なお、Wikipediaによると、日本にカレーが伝わったのは明治時代。イギリス経由で伝わり、独自の進化をとげて国民食となるに至ったようです。それに対し、ポルトガルにカレー(ポルトガル語ではcarilという)が伝わったのは16世紀、同国がゴア、ダマン、ディーウという、いわゆる「ポルトガル領インド」と呼ばれる地域を植民地化して以降のようです。ゴアの名物カレーがこれまた「蟹カレー」「イカカレー」「フィッシュカレー」などで、マカオと一致するのも興味深いところです。以上から、マカオのカレーは宗主国を同じくする「ポルトガル領インド」から伝わり、(中国や日本などの)近隣諸国の影響も受けつつ、独自の(やや日本寄りの?)形に落ち着いたのではないかと推測されます。『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)のスタッフがロケ途中に遭遇した一皿は、マカオ料理の中でも日本との間の400年の歴史を最も濃厚に詰め込んだ、両国友好のエッセンスだったのかもしれません。
<参考資料>
Wing Travel第1929号 2009年6月29日(pdf)
Wikipedia - Curry
Wikipedia – ポルトガル領インド
Wikipédia - Caril (culinária)






