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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2009/09/25

大食いとメイク(4)…カラコンの思わぬ副作用

『元祖!大食い王決定戦』(TV東京)のオンエア日がいよいよ迫ってきました。明後日(9月27日)は14:00から予選の模様を紹介した後、19:00からはいよいよ手に汗握る熱き本選の戦いを、3時間6分の特別番組として放送する予定です。是非、皆様でご覧いただければと思います。

その大食い番組と切っても切れない存在となったもの…それが、カラーコンタクトレンズ(カラコン)です。先週までは、当番組出場選手のメイクおよびカラコンについて述べてきましたが、最近では選手のみならずスタッフにも、メイク及びカラコンの波が押し寄せています。2005年の番組開始から早5年目、スタッフの顔ぶれにも多少の入れ替わりがありましたが、そこには一定の法則があります。初参加時は実に化粧っ気乏しく、男のように現場を駆けまわりながら炎のように仕事していた女性スタッフが、次の回にはほんのりメイクで登場、その次は服装の洗練度を増し、果てはカラコンまで…!となる傾向があるのです(なぜか、逆は無い)。これが、参加選手のオシャレ度と連動したのものなのか、はたまた「時代の変遷」の一断面を見ているだけなのかは、よく分かりません。おそらく、歴代の選手とスタッフの四年半にわたる相互作用の延長線上に、番組タイトルを「元祖!オンナ磨き選手権」に改名できそうなほどの、独特の雰囲気が出来上がっていったと見るべきでありましょう。

そんなカラコンには、医学的に色々と問題があります。通常のコンタクトレンズが「高度管理医療機器」として厳しい規制下に置かれてきたのに対し、視力矯正を目的としない(度なし)カラコンは、以前は「雑貨」に分類されて規制の対象外だったため、安全性や品質に問題のあるものが出回り、その装用による被害が続出しました。このため2008年8月、ようやく度なしのカラコンも「高度管理医療機器」に指定されることになりました。

通常のコンタクトレンズでも、不適切な使用方法によるトラブルが問題になっていますが、カラコンには、カラコンであるが故のトラブルもあることは知っておく必要があります。第一に、カラコンにプリントされている色模様の内側からものをのぞき見るため眼が疲れやすく、さらにレンズの位置(センタリング)が悪いと視野が狭まる点が挙げられます。動体視力や夜間視力の低下も伴い、特に車の運転等などに支障を来たすことは要注意です。また、第二の問題として、カラコンは色素をはさんでいる部分の酸素透過性が悪くなる宿命にあり、通常のレンズと比べても充血や角膜障害などのトラブルを起こしやすい点があります。従って、長時間の装用には不向きのレンズであり、まして着けっぱなしで眠るなど論外と言う他にありません。

また、珍しいところでは、MRI検査時のトラブルがあります。カラコンの多くが、その色素部分に酸化鉄など金属成分を含んでおり、装用したままの検査で磁気に反応して眼の違和感につながるケースが報告されています。病院の検査室ではカラコンを外すということを、医療従事者も患者も徹底する必要があるでしょう。

さて、カラコンの思わぬ副作用、実は当番組でも一度ありました。それは、日本にいる時には思いもよらなかった、衝撃の出来事でもありました。

番組恒例の海外ロケへと向かう、とある国での入国審査中のことでした。9・11事件(同時多発テロ)以降、世界中の空港でテロ対策の名の下に手続きが厳格化し、入国審査(passport control)、手荷物受取所(baggage claim)、税関(customs)などに漂うピリピリした空気は、いまだに残っています。そんなピリピリした入国審査の一角で、当番組ロケの参加者の一人が、足止めを食らっていたのです。その原因が、ズバリ「カラコン」でした。カラコン装用下に撮られたパスポート写真と、機内でカラコンを外したまま出てきた本人とを見比べて、入国審査官が言い放ちました。

「この写真の人物は、あなたではない!」

では、その係官は、なぜその人物を「パスポートと別人物」と断定したのでしょうか。おそらく、そのカラコンが虹彩の色を変えるタイプのレンズではなく、黒目を大きく見せるタイプのレンズだったことによると思われます。これが、虹彩の色を変えるだけのレンズだったら、ひょっとしてこの事件は起きなかったかもしれません。

例えば、どこからみても純粋な黄色人種でありながら、青い瞳をしている人が日本のパスポートを持って通ろうとしたら、本人が弁明しなくても、それがカラコンによるものだということを、審査官は何の疑問も無く受け入れるでしょう。それが遺伝学的常識の範囲内だからです。しかし、「黒目の大きさが違う」というのはどうでしょうか。黒目が大きくなる病気といえば、牛眼(先天緑内障)や巨大角膜など、乳幼児期の病気がいくつかありますし、重篤な緑内障による角膜径増大は成人でも存在します。しかし、それはあくまでも病気で、日によって角膜が大きくなったり小さくなったりするものではありません。美容外科の世界でも、鼻を高くする手術はありますが、目の大きさを変える手術というのはありません。かくして、「目の大きさが違う人間は、同一人物ではありえない」という理屈が、海外の空港でまかり通ってしまうのだと思われます。

まして、「瞳が黒い人が、同じ黒色のカラコンをつける」という発想は、ファッションに対する意識や関心が相当高くなければ、到底思いつく発想ではありません。そして、男女を問わず、日本ほど「ファッション偏差値」の高い国を、私は他に知りません。ドイツにも、「目を丸くする(große Augen machen)」「色目を使う(schöne Augen machen)」などの慣用句がありますが、それぞれを直訳すると「デカ目にする」「キレイ目にする」の意になるところに、妙な奥深さを感じてしまいます。ただ、少なくとも「私の目の黒いうちは」、ドイツ人が「目の色を変えてまで」オシャレに励む日は来ないように思えてなりません。


<参考資料>
J-CASTニュース(2007年10月29日):「デカ目になる」で人気上昇「カラーコンタクト」の事故多発

MEDAMA Cafe コンタクトとめがね

厚生労働省:平成20年度規制影響分析書(RIA)「おしゃれ用カラーコンタクトレンズに対する規制の創設」
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