大食い戦闘服(3)・チュニックとプロブレムゾーンの日独比較
先週は、世界に冠たるファッション先進国・日本においては、大食い選手もまた大変オシャレであること、そのオシャレには「腹部を圧迫しない」という大食い界ならではの機能性もまた重要であることについて説明しました。そんな大食い選手の間で人気の大食い戦闘服といえば「チュニック」ですが、実はこれ、最近ドイツでも若年女性のみならず中年女性の間でも人気急上昇中のアイテムであります。
先日、ドイツで見た番組にファッションのコーナーがあり、その日はたまたま「チュニック特集」でした(注1)。チュニックは英語でもチュニック(tunic)で、フランス語でもチュニック(tunique)なのですが、ドイツでは何故か「トゥーニカ」(Tunika)と呼びます。番組内では、「トゥーニカ」が大流行の兆しを見せていることを解説しつつ、その理由や、着こなし例などを挙げていました。そこで頻出の、大変印象に残った用語があります。それが、「Problemzone」(プロブレムゾーン)という単語です。
「このフワッとしたフォルムが、あなたのプロブレムゾーンをうまく隠してくれるのです!」
モデル風の司会者がしきりにこの表現を、番組内でこれでもかと繰り返していました。余ったお肉を「プロブレムゾーン」と呼ぶウィットに富んだ言語センスといい、その説得力といい、私は感心しきりでした。細身の女性が多い日本と違い、ドイツには腰周りにたっぷりお肉のついた肥満女性が大きな割合を占めているという厳然たる事実があります。チュニックが流行する以前は、Tシャツにジーパンという姿では自分のコンプレックスを覆うことも隠すこともできなかったドイツ女性たちが、ここにきてカラフルなプリント生地の「トゥーニカ」に飛びついたのも、大いに理解できます。自分のコンプレックスを直視せずにすむだけでなく、オシャレを楽しむこともできるようになったのですから。
ここでさらに思い出しました。最近私は甲子園や大食い本選ロケの終了後、女子大などの学校健診を担当してからドイツに戻るパターンが続いています。そして、近年の日本の女子学生に、大変気になる変化がみられるのです。
それは、おなかが出ている女性が増えたということです。最近の女子高生から女子大生に相当する日本の若年女性を数多く診ていくと、腕や肩などは細くて華奢なのにもかかわらず、意外なほどにお腹がポッコンと出ているのが特徴です。あまりにアンバランスな体型なので、妊娠しているのかと思うこともありますが、もしそうでなかったら失礼にあたるので、なかなか聞き出しにくいものがあります(←実際、空振り歴多数!)。稀に妊婦さんだったケースもあるものの、最も多い原因は、「過剰なダイエットと極端な運動不足が引き起こす、絶対的な腹筋不足」というあたりに帰着します。それでいて、お腹が出ていることを気にして、さらにダイエットにはげむ…そんな悪循環も、一部にはみられます。
日本人が世界的には肥満のきわめて少ない部類に入ることは、以前のコラムにも述べました(→大食いの資質・番外編(I)…体脂肪は断熱材?)。その上、日本では20歳代~40歳代の女性だけがどんどんやせていっているということも、疫学データが示しています(注2:かなり衝撃的なグラフなので、是非一見されることをお勧めします)。しかし、BMIは低くても、上半身や手足は痩せ細っていても、ドイツ人もビックリの「ポッコリお腹がプロブレムゾーン」状態になりうる…つまり今の女性の「痩せ」は筋肉量や骨量の減少がメインなのかもしれない…この学校健診シリーズをさせていただくようになる以前は、日本女性をこのような劇的な変化が襲っているなどとは、恥ずかしながら全く知りませんでした。かくして、日本でもドイツでも、女性はチュニックに色々なものを隠してもらうのでした。ドイツ女性の場合は皮下脂肪と内臓脂肪を、女子大生は腹筋が無いために引っ込められない腹部を、そして大食い女性選手の場合は胃に充満した食べ物…ということになるのでしょうか。
今後は、「元祖!大食い王決定戦」で素敵なチュニック(あるいはトゥーニカ?)に覆われたお腹を試合後にさする選手を見るたびに、「プロブレムゾーン」なる単語を思い出さずにはいられなくなりそうです。

(フランクフルトのZeil Gallerieにて撮影。いわゆる日本でいうサマーセールないしバーゲンであるが、なぜかドイツ語表記が皆無!上からフランス語、イタリア語、英語、スペイン語、ポルトガル語で、それぞれセールの意。「何でドイツ語が無いねん!ここはドイツやんけ~」的にショウウィンドウに突っ込み倒す地元通行人を複数目撃。母国語よりも外国語の方がオシャレと受け止められがちな風潮は、日本との共通点かもしれない。ただ、ドイツ語ではセールは「Schlussverkauf」といい、えらく長くなってしまうため、致し方なしとの意見もあり)
<参考資料>
注1) 2009.7.23 On Air:「Punkt 12」(RTL)
注2) 日本人の体格の変化(BMIの推移)(1947~2005年)





