大食いファッションは戦闘服(1)
2009年秋の「元祖!大食い王決定戦」(TV東京)は、今年もまた男女混合戦を予定しております。この大会への出場権を賭けた前哨戦として、8月8日に大阪予選、8月9日には東京予選が開催され、4名の選手が本選出場のキップを手にしました。この4名に新人戦覇者1名、推薦または敗者復活からの出場者3名を併せた合計8名の選手が、8月下旬から始まる本選ロケに参加することができます。
大阪・東京予選を担当させていただくのは二年連続となる私ですが、ロケのたびに感心するのが、選手のファッションセンスです。男女を問わず、大食い界は年々加速度的にオシャレ度を増していく傾向があるように感じられます。これまでも、初出場時には化粧っ気の無かった女性が、回を重ねるごとにメイクやファッションに目覚め、どんどん自分に磨きをかけていく様子に、私を含めたスタッフは何度も驚かされてきました。このロケに限らず世間一般的にも、女性は垢抜けない素朴さ(naivety)から洗練された女性性(femininity)へと向かうことはあっても、その逆を行く例には滅多にお目にかかりません。しかし、もっと凄いのは、大食い地方ロケなどを見てもわかる通り、日本では都会も地方も、女性のオシャレ度やアイテムに差がないということです。ファッション情報が列島の隅々まで行き渡り、交通網の整備や通販制度の普及などで、欲しい物は何でもどこでも手に入る国…日本って、つくづく不思議な国だなぁ、と実感する今日この頃です。
ちなみに、2005年の放送再開以降、大食い女性に人気の定番ファッションといえば、チュニックないしワンピースです。以前は本選しか担当しなかった私ですが、予選レベルで幅広い選手層を直接診察するようになると、どうも大食い選手のメイクやファッションには一定の傾向があるように思えます。その中でも、彼女たちに占める「チュニック・ワンピ率」は、回を重ねる度に増加している印象があります。
その原因ははっきりしています。大食いをする前のすきっ腹状態と、45分の大食い競技で目一杯腹に食べ物を詰め込み終わった状態とでは、別人かと思うほどウェストのサイズが変わってしまうからです。特に本選出場レベルの選手ともなると、胃の中に収まる食材の量は最低ラインでも6-7キロ(!)です。臨月の妊婦でもここまで腹は膨らまないでしょう。年々競技レベルの上がってきた大食い界を勝ち抜くためには、おなかを締めつけない衣服を着て試合に臨むということは、まさに大食い選手のイロハのイと言っても過言ではありません。その前提の上で、胸から腰周りにかけてのラインをたっぷりと覆い隠すことができるだけでなく、オシャレでもあるアイテムとして、チュニックやワンピースが好まれているのでしょう。「同じ戦闘服ならオシャレな方が良い」というのは、実に大食い選手らしい発想であり、理にかなった行動でもあります。

(2009年3月2日、シドニーのラーメン屋「一番星」にて撮影。決勝戦を圧倒的強さで制した日本最強の女王・菅原初代さんを、試合直後に診察。菅原さんの上衣が、腹部を圧迫しない大きめのチュニックである点に注目)
裏を返せば、そのような服を着てこない選手というのは、競技歴が浅いか、大食いの力量が高くないかのどちらかであるという推測も成り立ってしまうのです。その辺は、私なんかよりよっぽど大食い番組制作に関わるキャリアの長いテレビ東京や制作会社ゼロクリエイトの辣腕スタッフの方が、感覚的に熟知しています。有望新人の登場の期待がかかる予選当日の早朝、集合場所でこのような声が聞こえてくるのです:
「あのコなんかどう?結構、食えそうに見えるんだけど…」
世間的には、若いお兄さんが街角で女性をナンパする算段をすることはあっても、「どれだけ食えそうか」などとヒソヒソと、見知らぬ女性の大食いの力量を勝手に推測する光景なんて、このロケ現場以外では、世界中のどこにおいてもまずあり得ないと思うのですが、いかがでしょうか?さすが大食い界、やっぱり浮世と離れた独特な世界のようです。





