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金曜日

Dr.片山晴子

高校野球取材や大食い番組等のメディア出演を行う東京大学医学部医学科卒の脳神経外科認定専門医の医学博士。ドイツ在住。
2009/07/24

マイケル・ジャクソン追悼式にみる国際社会の「放送格差」

2009年7月7日の19:00といえば、日本では関東を中心に大食い新人発掘戦『火曜エンタテイメント! 元祖!大食い王決定戦 全国縦断女王発掘戦』(テレビ東京)が放映された日時でありました。偶然にもEU時間で全く同じ表記となる7月7日19:00より、こちらドイツでは、6月25日に亡くなったマイケル・ジャクソンさんの追悼式がロサンゼルスのStaples Centerから世界へ中継されました。この日は、早朝からテレビもラジオも新聞もマイケル一色でした。懐かしのビデオクリップ紹介は序の口で、マイケルと親交のあった作家やマネージャー、果てはまるで似ていないマイケルのソックリさん(ドイツ人)まで駆り出されていました。式典はドイツ国営放送2局を含む6局によりお茶の間に生中継されましたが、それぞれの局が全く別の同時通訳及びゲスト解説を付けていたという、ドイツにしては珍しく気合の入った番組構成が大変印象に残りました。各番組前後の特番では、アメリカが20局、お隣のフランスでは9局が中継したという話や、中東や中国でも生中継があった様子が紹介されていました。


 
(ドイツにおけるマイケル・ジャクソン追悼式の生中継番組。2009年7月7日20:03撮影。左が民放系ニュース専門チャンネルn-tv、右が国営放送ARD)

それだけに、日本ではこの追悼式の地上波中継(無料放送)が無かったということを後で知り、これまた大いに驚きました(注1)。有料放送のCNNjやMTVでは中継があったようなので、日本でこの番組をリアルタイムで見たい人は、スカパーに大急ぎで電話する(オンライン加入では間に合わないため)か、インターネット中継サイトを探すしかなかったということでしょうか。こちらでは「日本ではNHKが中継担当」とも報じられました(注2)が、これは火のない所の煙だったのか、火あっての煙だったのか、不明です。もっとも、歌手Queen Latifahさんが壇上で読み上げたMaya Angelouさん(注3)緊急寄稿の詩の中に、”Today in Tokyo, …(中略:地名の羅列)…, we all miss Michael Jackson”というフレーズがありました。(下記ビデオの4:09付近)

YouTube – Michael Jackson Memorial Service – Queen Latifah Reads Maya Angelou
このあたりを見る限り、日本での放送予定はあったものの間際になって事情が変わった、という可能性がやはり考えられます。

たとえ全世界中で10億人が見た番組だからといって、何も日本全国にマイケルの追悼式がナマで配信される必要性は必ずしもありません。むしろ、今回の全米での視聴者数3億1100万人という数字が「オバマ大統領の就任式(約3億8000万が視聴)やダイアナ妃の葬儀(3億3200万人)よりも少ない」だの、さらに「レーガン大統領の葬儀 (3億5000万人)にも負けた」だのと、視聴率競争ならぬ「数字の狂騒」が他のニュースを押しのけて闊歩している状況を見ると(注4, 5, 6)、日本はこれらに巻き込まれなくて済んだと考えることもできます。もっとも、もし今回の追悼式中継合戦に日本が参戦していたならば、マイケルはひょっとしたらダイアナさんの数字を越えられたのではないかという気がしないでもないのですが…それが故人の意に沿うものかどうかは別にして。

ただ、私の周囲の知人(ドイツ人)にこの話をすると、誰もが一様に驚きを隠さず、「日本のような世界2位の大国がこの輪の中に入っていなかったなんて、信じられな~い!」とのたまいます。ここでピーンと来たのが、先週紹介した「大食い番組の映らない36府県」の話でした(→大食い番組にみる日本国内「放送格差」の構図)。世界における日本は決して情報過疎地ではないはずですが、このマイケル追悼式に関する限りは、まさに「大食い番組の放送がなかった大阪府」そのものだったと言えそうです。極論するなら、世界中の大勢の人間が既に生放送を見てしまっており、一歩日本を出れば「あの日を共に体験したか?」という主観の有無が永遠に問われてしまい、例え一週遅れで情報を取ることができたとしても、生放送組との距離感の差は縮んでいかない…といった感じでしょうか。

もちろん、逆のケースも多く、「日本人全員が知っていて世界の誰も知らないこと」といった共有体験を確認しあう行為は、日本人としての一体感を醸成してきた側面があるはずです(例:ON、V9、KYなど…)。都道府県間の情報格差もまた、例えそれがあくまでも歴史的な経緯であって、決して恣意的なものでなかったとしても、この手のいささか排他的な主観の形成に貢献してきたでしょうし、これこそ地方文化を守る最後の砦という考え方も、あながち外れているとは言えません(注7)。

都道府県別人口21位の岡山(195万人)や40位の香川(100万人)に届く情報が、都道府県別人口2位である大阪府(884万人)に届かないということもある…この構図は、日本の都道府県間のみならず国際社会における国家間の「情報格差」という、奇しくも同じ7月7日の午後7時にオンエアされた2つの番組の背後に潜む思わぬ共通点を浮き彫りにしたのだから、実に不思議と言う他にありません。といっても、「大食い」にも「マイケル」にも関心がない人にとっては、私が一体何に対して「奇跡かも!」などと勝手に盛り上がっているのか、理解不能なのでしょうけれど…。

<参考資料>
注1) Yahoo! 知恵袋:"「マイケル・ジャクソンの追悼式」は、なぜ日本のテレビで生放送されなかったのでしょうか?"
注2) RP Online 2009年7月8日:"Eine Milliarde Zuschauer verfolgte Jackson-Trauerfeier"
注3) Official Website of: Dr. Maya Angelou
注4) Digital-fernsehen 2009年7月8日: "Millionen sahen Trauerfeier für Michael Jackson im TV"
注5) Tele7.fr 2009年7月8日:  "Audiences TV : L'Hommage à Michael Jackson suivi en majorité sur TF1"
注6) News de stars 2009年7月9日: "Michael Jackson: battu par Obama et Lady Di"
注7) Wikipedia – 県域放送が生まれた理由、県域放送の是非

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